デビッド・マレイ『Francesca』

ジャズサックス界の生きる伝説、デビッド・マレイ

そんな彼がリリースした新作は新世代のプレイヤーと共演したカルテット作『Francesca』
今作はマレイが、新世代の若いミュージシャンと競演したアルバムです

メンバーは
David Murray: Tenor Saxophone and Bass Clarinet
Marta Sanchez: Piano
Luke Stewart: Acoustic Bass
Russell Carter: Drums

ピアノのマルタ・サンチェスはスペイン出身のピアニスト。彼女はいまのデビッド・マレイ・カルテットのレギュラーピアニストのようです

ベースのルーク・スチュワートは、Irreversible Entanglementsのリーダーで、今年Pi Recordingからソロ・アルバムをリリースし、ぐんぐんと活躍が増えてきた印象です

Russell Carterは、、正直あまり良く知りません。ネット検索してもあまりヒットしないし。(本名だからしょうがないとはいえ)平凡な名前ってのはネット時代には損ですね

リーダーのサックス奏者が若手メンバーと作るアルバムという最近の似たような例では、チャールズ・ロイドのアルバム『The Sky Will Still Be There Tomorrow』などがあるかな
話はそれますが、このロイドのアルバムも良盤だったと思いますね。
ピアノのジェイソン・モランが全力疾走でアルバムを引っ張っていたようなアルバムでしたけど

話をデビッド・マレイを戻すと、、
彼は一般的にはハードなブロウを豪快にバリバリ吹くイメージがあったのですが、今作で聴ける彼のサックスはぜんぜんそんなことなかったですね

サックスのフレーズはメロディアスかつスムーズで淀みない感じ
ブラックミュージックっぽさは極力抑えられている気もします

「うーん、マレイってこんな人だったのかな」と思って最近のアルバムを聴いてみたのですが、ハード指向のアルバムもファンクっぽいのもあったり、かなり共演者によってかなり作品のカラーを変えている感じです

そういう意味では、今回のアルバムは全体的にマルタ・サンチェスのカラーが強いアルバムのような気もします

このアルバムはほぼマレイ作の曲を演奏しているのですが、どの曲もすごくチャーミングで雰囲気が良く、聴いてて癒されます。
まるで長く演奏されてきたスタンダードのような雰囲気もあります。
マレイにこういった作曲の才があるというのは驚きですね

マレイは今ではポルトガルのシーネスに住んでいるそうです

精力的にアルバムを作ってもいるので、別に引退したかというとそういう訳ではなさそうです
気候的にも、ジャズサックス奏者として生計を立てるにも、アメリカよりもヨーロッパの方が良い面がたくさんあるのかも

この『Francesca』に漂うリラックスして楽し気な雰囲気も、そういった生活環境が影響しているのかもしれません

若いミュージシャンと違って、マレイはもはや自分が何者かをアルバムで証明する必要はないわけで

ただスピーディーで若者の活力あふれる演奏に、余裕しゃくしゃくで応えるマレイの姿に「貫禄だなぁ」と思ってしまいますね

長くジャズの世界の一線で活躍してきた実績は伊達じゃないな、と